| 移植後リンパ増殖性疾患 post-transplant lymphoproliferative disorder |
| 画像所見 |
| 非造影CT |
![]() |
| ・右頭頂葉、側頭後頭葉に二か所低吸収域を認める。 ・右頭頂葉では内部にリング状の高吸収結節があるようにみえる。 |
| 非造影MRI(右頭頂葉病変) T2WI/FLAIR/T1WI |
![]() |
| ・T2WI/FLAIRで低信号結節と周囲に高信号の浮腫性変化を認める。 ・T1WIで結節は脳皮質と低〜等信号を示す。 |
| 非造影MRI(右頭頂葉病変) T2*WI/DWI/ADC map |
![]() |
| ・T2*WIで結節に低信号域のリムがあり、ヘモジデリン沈着を示唆する。 ・DWIで結節は拡散制限を示す。 |
| 非造影MRI(右側頭後頭葉病変) T2WI/FLAIR/T1WI |
![]() |
| ・T2WI/FLAIRで低信号結節と周囲に高信号域を認める。 ・T1WIで結節は周囲の脳実質と等信号を示す。 |
| 非造影MRI(右側頭後頭葉病変) T2*WI/DWI/ADC map |
![]() |
| ・T2*WIで結節内部に低信号域を認め、ヘモジデリン沈着がある。 ・DWIで結節には拡散制限を認める。 |
| MRA |
![]() |
| ・脳血管に異常を認めない。 |
臨床経過
・ノカルジア症の頭蓋内再燃を考慮し、入院の上、抗菌薬加療が開始された。
・髄液検査施行するが、感染症を疑う所見を認めなかった。
・治療方針決定のため、開頭生検が施行された。
| 病理所見 |
![]() |
| ・大〜中型の異型リンパ球が浸潤しており、細胞密度の上昇を認める。 ・核は大きく不揃いで一部核小体を認める。 ・CD-20陽性であり、B細胞の増殖と考えられる。 ・EBER ISHも陽性となり、EBVの関連を示唆する。 → 病理所見から移植後リンパ増殖性疾患の診断となった。 |
診断
移植後リンパ増殖性疾患(Post-transplant lymphoproliferative disorder:PTLD)
| その後の臨床経過 |
| ・Day15 | 肝酵素上昇。 PTLDの診断となり、免疫抑制薬の減量とリツキシマブの投与開始。 |
| ・Day22 | 全脳照射 36Gy + 局所照射 9Gyで放射線治療開始。 皮膚移植片対宿主病が増悪。 |
| ・Day25 | 培養検査からメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が分離。 |
| ・Day41 | 多臓器不全で逝去。 |
| 移植後リンパ増殖性疾患(Post-transplant lymphoproliferative disorder:PTLD) |
・造血幹細胞移植後や臓器移植後に発症するリンパ増殖性疾患。
・Epstein Barr virus (EBV) 感染に関連したB細胞の異常増殖が原因であることが多い。
移植後の免疫抑制療法によるT細胞系の抑制が、EBVによるB細胞増殖を促進するとされている。
PTLD発症頻度と時期
・全体としてのPTLDの発症率は1〜33%で、CNS-PTLD (中枢神経系移植後リンパ増殖性疾患) は
報告によって異なるが最大30%までと報告されている。
・発症時期は移植後最初の1年に多く、中央値は約4-5年である。しかし、移植後10年以上経過して発症する報告もある。
CNS-PTLDの神経症状
・非特異的で多様である。症状には、頭痛、精神状態の変化、痙攣がある。
局所神経症状としては片麻痺、歩行困難、失調、失語、構音障害、めまい、複視などがある。
CNS-PTLDの診断
・確定診断には生検が必要である。脳脊髄液 (CSF) 中のEBV PCR陽性はCNS-PTLDを強く示唆する。
CNS-PTLDの治療と予後
・生存期間はかなり多様で、最初の1か月以内に死亡する患者もいるが、多くの患者は数年間生存する。
治療はまず免疫抑制療法の減量または中止を行う。長期生存の鍵は、免疫抑制療法の調整とEBV不活化による免疫回復である。
化学療法、局所放射線療法を行うこともある。
CNS-PTLDの好発部位
・大脳皮質下白質、脳室周囲白質(小脳、脳幹は少ない)
・主に患者の免疫学的状態に応じて、孤発性または多巣性になる場合がある。
免疫不全状態でない患者は孤発性となる場合が多いと報告されている。
画像所見的特徴
・T1WIで低信号、T2WIで不均一な高信号を示し、造影T1WIでリング状の造影剤増強効果を認める。
これらの所見は、中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)と酷似する。
EBVによって生じるPTLDでは内部に出血を来すことが多く、T2*WIやSWIが有用となる。
| 自験例:40歳代男性、ALLの既往、移植後11カ月。痙攣発作を起こし、緊急入院。 T2WI/DWI/造影T1WI |
![]() |
| T2WIで不均一な高信号を示す腫瘤として描出され、内部に点状の低信号がみられる。周囲に浮腫性変化を伴う。 DWIではリング状の高信号を示し、拡散制限を伴う (ADC mapは非掲載)。造影T1WIではリング状造影剤増強効果を示す。 |
| ??Teaching point 移植後の脳結節・腫瘤では、CNS-PTLDを鑑別に入れるべき。 内部の出血や壊死を反映してリング状の造影効果を示すことがある。 |
| 自験例:40歳代男性。CMLに対して同種移植後約8年。意識障害が遷延。 FLAIR/FLAIR/T2*WI |
![]() |
| FLAIRで左海馬尾部に腫大と信号上昇を認め、当初は辺縁系脳炎などを鑑別にあげたが、一ヶ月後のMRIで病変は増大、 腫瘤として描出され、周囲の浮腫も増悪した。またT2*WIで内部に出血も認められ、髄液検査にてEBVが同定され、PTLDと臨床診断された。 |
| ?Teaching point CNS-PTLDは移植後一年以内に多いが、数年後の発症もある。 EBV由来では出血が多く、T2*WIやSWIが診断に有用である。 |
CNS-PTLDの鑑別診断
・リング状や不均一な造影効果、拡散制限をきたす病変が鑑別になる。
→ 中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL)、膠芽腫、膿瘍、転移性疾患など
| 50歳代男性、HIV関連DLBCL治療の既往あり。 痙攣で救急搬送。 T2WI/T2*WI |
![]() |
| 左頭頂葉皮質下にT2WI低信号を示す結節があり、周囲に浮腫性変化を認める。 T2*WIで結節内に低信号域があり、ヘモジデリン沈着を示している。 |
| DWI/ADC map/造影T1WI |
![]() |
| 結節はDWIで辺縁が高信号となり、拡散制限を認める。 造影T1WIでリング状造影剤増強効果と、脳脊髄液に近接する部位に淡い造影剤増強効果を認める。 → 生検が施行され、DLBCLの中枢神経再発と病理診断された。 |
| ?Teaching point 免疫不全患者の悪性リンパ腫は病変内部に出血や壊死を伴い、不均一あるいはリング状の造影剤増強効果を示し、 CNS-PTLDの画像所見と酷似する。 |
| 本症例を見直すと |
![]() |
| CTにおける高吸収結節があり腫瘍性病変を示している。 |
| DWI/ADC map/T2*WI |
![]() |
| MRIでは、細胞密度の高さを示す拡散制限、出血を示すT2*WI低信号の存在が本症の診断に有用であった。 |
| 結語 |
・造血幹細胞や臓器移植後の患者が中枢神経症状を来し、MRIにて脳病変を認めた場合は本症を鑑別に入れる必要がある。
・T2*WIやSWIが鑑別に有用である。
参考文献
|