| 結核 tuberculosis |
| 画像所見 |
| 同日施行された造影CT |
![]() |
回腸末端から上行結腸に造影増強効果を伴う偏心性の壁肥厚 |
![]() |
| 両肺下葉に限局性の気管支拡張、小葉中心性の粒状影、分枝状影 |
入院時に施行した、喀痰・胃液のTB-PCRが陽性
↓
活動性肺結核、腸結核 の診断となった
| 腸結核 |
好発
・免疫抑制状態:HIV、ステロイドや生物学的製剤の使用、悪性腫瘍
・結核流行地域からの移民:インド・パキスタン[本症例はネパール出身]
・ネパールでは年間3-4万人の新規患者登録。日本の約20倍で高蔓延国の一つ。CDとの鑑別が問題となるが、臨床症状においては短期間に発症する(<3ヶ月)の腹痛が多いとされる。CDと比較して、血便は少ないとされる。
感染経路
・経腸管(最多)
- 肺結核患者が喀出する結核菌を含む喀痰を嚥下する
- 未殺菌の牛乳を摂取する
・肺など他臓器からの血行性、リンパ行性感染
臨床症状
・全身症状(発熱・体重減少・寝汗)、消化器症状(腹痛、下痢、腹水)
| 腸結核の診断 |
・病変部からの結核菌、乾酪性肉芽腫の検出が確定診断となる。
・しかし検査精度は低く、培養検査・抗酸菌染色・PCR検査の感度はそれぞれ50%、38%、25%であった。
・病理検査では肉芽腫の検出は10-80%、乾酪性肉芽腫の検出率は0-23%とされ文献により様々である。
・抗結核薬投与による診断的治療がなされることもしばしばある。
| 腸結核の画像所見 |
好発部位
・リンパ組織が豊富な回盲部領域に好発するが、回腸、右側結腸にも発症
内視鏡所見:多発する輪状・帯状潰瘍
Intern Med. 2014;53(9):957-992.
CT所見
・回盲部領域を中心とした非特異的な壁肥厚
・時に瘻孔形成や穿孔、腸閉塞を認めることもある
・病変進展は連続性>非連続性
・乾酪壊死を反映した壊死性リンパ節腫大は比較的特徴的
| 鑑別診断 |
回盲部病変の鑑別
・腸結核
・腸管ベーチェット病
・Crohn病
・エルシニア腸炎 (サルモネラ、カンピロバクター)
・NSAIDs起因性腸病変 etc
壊死性リンパ節腫大の鑑別
・結核
・悪性腫瘍のリンパ節転移
・悪性リンパ腫は未治療で壊死をきたすことは稀
| 回盲部病変の鑑別 -腸管Behcet病- |
・Behcet病は4症状(口腔内アフタ、皮膚症状、眼症状、陰部潰瘍)を特徴的とする全身性疾患。
・肺病変(肺動脈瘤や気管・気管支粘膜病変)を伴うこともある。
・腸管病変は回盲部に好発するが、食道から肛門まで消化管全長に分布することもある。
| 回盲部病変の鑑別 -Crohn病- |
・Skip lesion
・Comb sign
・長区間に渡る病変
・肛門周囲膿瘍
| 回盲部病変の鑑別 -エルシニア腸炎- |
・乳幼児〜成人で発症
・胃腸炎症状が主体だが、咽頭炎や結節性紅斑などの腸管外病変を伴うこともある。
・診断は血液培養・便培養、抗体測定
・エルシニアはリンパとの親和性が強く回盲部領域のリンパ節腫大が目立つ。
・右側結腸病変としてサルモネラ、カンピロバクターも鑑別されるが、エルシニアには限局した回盲部病変やリンパ節腫大が特徴的
| 回盲部病変の鑑別 -NSAIDs起因性腸炎- |
・回盲部、右側結腸〜S状結腸の浮腫性壁肥厚。
・直腸は温存されることがある。
| 出題の意図 |
放射線科医が知っておくべき疾患・病態
・common disease
・典型的な疾患の非典型的な所見
・あまり知られていない疾患概念
・緊急に対応が必要な疾患
・治療方針が左右される疾患
・本症例はベーチェット病加療中であり,原疾患による回盲部病変と免疫抑制下であることから結核が主な鑑別となった
・両者は治療方針が異なるが,映り込んだ肺野病変からは積極的に結核を疑うことができた
・画像所見を全て拾い上げることは放射線科医にとって必要
・緊急に対応が必要な疾患・治療方針が左右される疾患のため,知っておく必要がある
| Take Home Message |
・回盲部炎の鑑別として、腸結核やCrohn病、腸管ベーチェット病、エルシニア腸炎などが挙げられるが、壊死性リンパ節腫大は腸結核には比較的特異的である。
・これらの鑑別疾患はいずれも全身疾患であり、画像所見だけでなく臨床症状や他の血液マーカーなども考慮して、診断に迫るべきである。
参考文献
|